LIVE REPORT BRATS
2017年3月29日。ついにこの日がやってきた。
黒宮れい率いるBRATSの2016年04月3日の突然の活動休止宣言から約一年、復活の狼煙をあげるライブ。
BRATS 3/29(水)無料ライブ開催決定!先着150名様限定で
— BRATS official_JP (@brats_official) 2017年2月24日
ご招待!詳細はBRATSオフィシャルホームページでご確認下さい。
→https://t.co/TIiaOz4qUs
このライブに先駆けてBRATSは10月に新曲「アオニコイヨ」を発表。これはTOKYO MXで放送されるアニメ「TO BE HERO」の主題歌。4月の活動休止からきっかり6ヶ月でのこのアナウンスに驚きは隠せなかった。なぜなら、黒宮れいには メジャーデビューを果たし破竹の勢いのTheIdolFormerlyKnownAsLADYBABYの活動があったからである。LADYBABYでのライブ、リハーサル、様々なプロモーション、ライブ等へのお誘いなど、多忙を極めてるはずでここにBRATSの活動の余地があるとはとても思えなかったからだ。
しかし、やると決めたことなのだろう、自分がかつて聞いていた半年後にBRATSとして会えるという言葉通りに実行してきた彼女とBRATSチームの行動力は凄まじかった。新曲がアニメ番組とタイアップという最高のプロモーション。そしてあのクオリティ。
アニメのオープニングでしか聞けなかった「アイニコイヨ」のフルバージョンのMVが発表されたのは12月。
サウンドは明らかに重くなっている。活動休止前のBRATSのライブに毎回のように通っていた時に絶えず感じていた点、それはバンドの要であるドラムのメンバーがいないことで音の厚みがやはり物足りないということ。MVを見てもらえばわかるのだが、サポートのドラマーが加わったことで、音の重厚さが増し黒宮れいのヴォーカルを際立たせているのは一目瞭然、ドラムメンバーの加入により明らかにバンドのクオリティはあがり、表現の幅、深さは数段上がったと言えるだろう。そして、キュートでポップなイメージだった以前のBRATSからの脱却を目指しているのが伺われたが、果たしてその試みが成功したか否かは実際のライブを見て、体感しないと評価はできないと思っていた。
ここで活動休止前のBRATSの貴重なライブ映像がGYAOにアーカイブされているので見てもらえばわかるのだが、この当時の面影はかけらもないのはわかると思う。
そして、黒宮れいの16歳の誕生日に合わせたかのようにビッグニュースが11月28日に飛び込んでくる。それは新曲「脳内消去ゲーム」が、来春公開の映画『スレイブメン』(井口昇監督)の主題歌に決まったということだ。アニメの主題歌に引き続き映画の主題歌に抜擢されたのである。デビュー前のほぼほぼ無名のバンドなのにである。楽曲のクオリティの高さも当然だが関係者からの、BRATSなら大丈夫という信頼がなければ任せてもらえるわけがない。そしてBRATSはその映画関係者や「アイニコイヨ」を聞いた決して多くはないコアなファンが待ち望んでいた希望や期待に最高の形で応えることができたのはいうまでもない。前作の「アイニコイヨ」は楽曲のクオリティこそ最高水準だったが、MVの出来という観点でみると復帰第1作ということもあって3人の動きに若干ぎこちなさが見えたりと決してベストではなかったが、今回の「脳内消去ゲーム」のMVは荒廃的なイメージと曲のテイスト、どこか黒宮れい本人を想起させる歌詞とが見事に融合し、MVの中のBRATSの3人は痺れるほどのかっこよさだ。特に黒宮れい(Vo)の表情、自由にあるがままに歌うその姿はLADYBABYでのパフォーマンスで見せるアイドルとしての黒宮れいを全く想像させない。しかしどちらも本当の黒宮れいなのだろうと納得してしまうほどのレベルである。不敵な笑みを浮かべ歌う黒宮れいの底には何があるのか、興味は尽きない存在だ。
ライブ会場は池袋LIVE INN ROSA
BRATSのベースの黒宮あやのツイートに反応した熱心なファンだけが応募出来た今回の復活ライブ。
明日の夜BRATSのオフィシャルtwitterとかHPで報告があるので見といてね🌹 pic.twitter.com/aQ23D0w5AF
— 黒宮あや (@Aya_brats) 2017年2月23日
ROSAは公称150人ほどのキャパで応募者全員が入れるわけもなく抽選になり、外れてしまって涙を飲んだファンも多かったはず。だからこそこの場に来られたファンの一人一人はBRATSの復活を本当に心の底から待っていたという人、LADYBABYで黒宮れいのファンになり初めて来る人、様々だったが、一人一人の期待と熱量はだれも引けを取らないそんな感じだった。ライブ会場は中央に大きな構造上必要な柱があり、キャパ150人となってはいるが実際にはそれよりも面積的には広いらしく250人以上のファンが詰め掛けたようで場内はパンパンになっていた。開演前にはBRATSのライブが初めてで少し不安だといった声がなかったかと言えば嘘になるが、そんな心配は杞憂だったことはライブが始まった瞬間にわかった。
久しぶりにBRATSの姿を迎えるオーディエンスは手拍子で3人の登場を待つ。最初にサポートドラマーのぴろしきさん(Dr)が、程なくして黒宮あや(Ba/Cho)、ひなこ(Gt/Cho)が出てくると会場から歓声があがり、黒宮れい(Vo)が登場すると1年ぶりのBRATSとしての姿に息を飲む人、初めてその姿を見る人、様々な感情が折り重なった歓声がライブハウスに響く。BRATSとして沈黙を貫いていた彼女の第一声は、「こんばんは、BRATSです。」という鋭いナイフのような短い挨拶。間髪入れずドラムが打ち鳴らされ、臨戦状態へ。「アイニコイヨ」を一曲目にプレイし早くもヒートアップ状態。かつてのBRATSのサウンドとは違う重厚なサウンドを叩きつけ早くも会場は沸騰。新曲の「なかったこと」に入っても熱気は高まる一方だ。見守るようにみていたオーディエンスも両手をあげて声をあげる。初見にも関わらずだ。MCなどなくてもライブをグイグイと引っ張っていくパワーは一層強烈に発揮されている。「脳内消去ゲーム」ではハードコア衝動まっしぐらで攻め込んでさらに場内を焚き付けていく。黒宮れいのヴォーカルに被せるように自然と起こったオーディエンスのハンズ・クラップで会場は完全に一体化。凄まじい迫力、轟音の中でも各パートは埋もれないし、やはり特筆なのは黒宮れい(Vo)の殺気さえ感じさせる熱度だ。曲が終わってこのタイミングのMCでCDリリースが告知される。思わぬ予定外のサプライズに場内は歓喜に包まれた。しかし、本人たちは喜ぶどころか、告知することさえ億劫だと、早く次の曲を演りたいんだと言わんばかりの表情。究極のツンデレか。頭の中はすでに次の曲のプレイに集中しているようだった。「Pain」は黒宮あや(Ba)とぴろしき(Dr)によるリズム隊の強固さを軸に少しばかり哀愁的なメロディに個性的なフレーズが際立っている。サビの「愛されて愛されるままで〜」を情感たっぷりに、強いメッセージを発信。次の曲はどんな曲か?と会場全体が全神経を集中させて耳をそばだてる中、ひなこ(Gt)が奏でるシリアスでストイックなリフで始まる「正当化プライドモンスター」。そこから一気にグランジを越えさらに重く重厚、ジェントと言ってもいいくらいのサウンド、それに負けない変幻自在なといってもいい厚みのある黒宮れい(Vo)の激しさ。伸びのある高音のレンジをいっぱいに使った彼女本来のオーディエンスとしっかりと向き合う姿勢。近いようで遠い、届きそうで届かないステージの彼女の存在を実感。終わって「次が最後の曲です。」と短く一言。それを聞いても誰も不満やアイドル現場によくあるガヤは一切聞かれない。それは当然だろう、ここまでのパフォーマンスでオーディエンスはBRATSというバンドのプレイスタイルに絶対的な信頼を置いてるし、逆も然り。だからこそ、ほぼほぼ初見にも関わらず会場中が汗でぐちゃぐちゃになっているのだから。「きまりごと」では最後の曲だとは微塵も感じさせないスピード感で走り抜けていく。ロックバンドとしての本質が剥き出しのような曲で最後の力を振り絞る、しかしプレイが雑にならない、心地よい重量感のあるドラム、美しいギターのリフ、なめらかなベース、最後の最後まで4人のグルーヴは乱れないで一気に駆け抜けていった。終演後の去り方までも今日という日にふさわしい、貫かれていた。
黒宮れい(Vo)をはじめ3人ともアッパーなビートに合わせてステージで激しく鋭いヘドバンをどの曲でもかましてたしそれはある意味叫びを全てそこに集約させたかのよう。そして全体を覆うオルタナティヴ・ロック、グランジ感、ディストーションギターが印象的だったサウンドは重厚、退廃的でかつ身体的、暴力的で独特な緊張感を持っていた。それにあわせたかのように黒宮れい(Vo)の力強さが増している。自分が印象に残っているのは「なかったこと」と「正当化プライドモンスター」の2曲。
特に「なかったこと」はNIRVANAのBreedを彷彿とさせる。
特典会
ライブとは打って変わって普通の女の子に戻ってきゃっきゃ笑いながら楽しそうにゆったりと3人でこの特別な時間を共有した仲間であるオーディエンスとの連帯感を確認するような特典会。来てくれた一人一人に気持ちをこめた「ありがとう」を伝える3人の姿がとても印象的だった。そして今回の特典会ではなんとサイン入りの生写真がもらえるというとても嬉しいプレゼントつき。
【3/29(水)ライブでのサイン入り生写真お渡しについて】
— BRATS official_JP (@brats_official) 2017年3月26日
ライブ終演後、ホール出口付近にてサイン入りの生写真を、
BRATSメンバーからお渡し致します。
その際、メンバーとの握手やハイタッチ、また写真撮影はご遠慮下さい。
ご理解ほどよろしくお願い致します。
告知など
4月5日にこんな最高なニュースが、限定盤にこの日のライブ映像が収録されるようなのでこちらをぜひ。
BRATS、6月にCDデビュー。限定盤に復活ライブ映像収録https://t.co/IkYcMvztbc#BRATS
— BARKS編集部 (@barks_news) 2017年4月5日
今後のBRATSのライブ情報など
【BRATS LIVE Schedule】
— BRATS official_JP (@brats_official) 2017年3月30日
◇4/29 (土・祝)
『HUG ROCK FESTIVAL 2017 ハグ誕』https://t.co/Ii9V17RYXH
◇5/5 (金・祝)
『JAM FES 2017』https://t.co/822M1Tdozh
まとめ
今日のライブはほんの序章、彼女たちの本当の意味での復活ーーー完全復活はきっとまだまだ先のことなのではないか、と思わざるを得ないほど、BRATSの3人は遥か先を見据えているように思えたライブだった。この先きっと全力で笑ったり泣いたり暴れて叫んで日々のイライラやもやもやも全て置き去って真っ白に燃え尽きることのできる特別な時間をBRATSはライブで自分たちにくれるんじゃないか。そう確信できるほど、研ぎ澄まされた意識や覚悟が全身に漲っていた。
ライブ前にあった心配や不確定要素など負の感情を一掃させてくれる彼女たちの熱い志と真摯な思いが突き刺さる20分。
キュートでポップなBRATSがオルタナティヴを軸に自在にプレイするスタイルに見事に生まれ変わった瞬間を目の当たりにして、そしてそれを体感した。
これから一体どう進化していくのか、これからBRATSの前に続く道、そして立ちはだかる障壁を乗り越え、歩んでいく彼女たちのパワーになるのは間違いなくライブを共に盛り上げる一人ひとりのオーディエンスだ。
一方で誕生とは喪失である。赤ん坊は生まれ出るとずぶ濡れで泣く、いきなり何かを失うからだ。BRATSは確かに今日生まれ出た。では何か失ったものはあるのだろうか、最高だったからこそ、逆にそんなことをも帰りに考えてしまったライブだった。
セトリ
3/29『Reborn』@LIVE INN ROSA- SET LIST -
1.アイニコイヨ
2.なかったこと
3.脳内消去ゲーム
4.Pain
5.正当化プライドモンスター
6.決まりごと